むちうちとなった場合の慰謝料の計算方法
1 むちうちの特徴
交通事故などにより人体が強い衝撃を受けて重い頭部が揺さぶられた際に、頭部を支えている頸部に不自然な外力がかかり、むちうちになることがあります。
むちうちは、首が、鞭がしなるように揺れ動くことで頸部に急激な過伸展や過屈曲運動がおこり、頚部や神経に損傷を与えることで痛み、痺れ、頭痛、めまい、吐き気など様々な症状が現れます。
診断名としては、頸椎捻挫、頸部挫傷、外傷性頚部症候群などがありますが、診断名が違っても保険会社の対応が変わることがありません。
むちうちが疑われると、まずはレントゲン検査によって診断を行うことが多いですが、筋肉や靭帯、神経等の障害の場合はレントゲン検査では分からないこともあるため、3か月程度経ってもある程度の改善がなければ、MRI検査などの精密検査を行うことが多いです。
むちうちの場合は、首の動かしづらさや痛みに対して、リハビリテーションや電気治療、注射等が行われますが、他覚所見がないため、保険会社が短い期間で治療を終了するように言ってくることが多くあります。
2 むちうちの慰謝料
むちうちで通院をすれば、治療期間や治療日数に応じて傷害慰謝料が請求できます。
慰謝料とは、交通事故による通院などで発生した精神的な苦痛を慰謝するための損害賠償のことです。
精神的な苦痛をお金で算定するのは難しいのですが、一般的には①自賠責基準②任意保険基準③弁護士基準の3つの算定基準があります。
ただし、脳の損傷などの重症の場合、骨折などの他覚所見がある場合、むちうちなどの他覚所見がない場合などで、計算方法が少し異なっています。
自賠責基準は、強制保険が被害者に行っている最低限度の補償の金額で、過失割合や通院期間にもよりますが、通常は3つの基準のなかでいちばん金額が低い基準になります。
任意保険基準とは、各保険会社が独自に設定している基準ですので、保険会社ごとに違いはありますが、そこまで大きな差異はありません。
弁護士基準とは裁判例を参考にした基準で、裁判所基準とも言います。
3つの基準のなかでいちばん金額が高い基準ですが、管轄する裁判所ごとに少しずつ違いがあります。
3 むちうちの後遺障害慰謝料
医学的な観点からは,通常、半年程度治療を継続した後は大幅に改善が見込めなくなることが多く、症状があまり変わらず一進一退となった場合には、後遺障害申請を考えることになります。
むちうちで、事故当初から常時の痛みが一貫して継続し、症状の回復が困難と判断されると「局部に神経症状を残すもの」として後遺障害等級14級9号が認定されることがあります。
後遺障害等級14級の後遺障害慰謝料は裁判基準で110万円になります。
また、MRI画像やCT画像があり、明確に事故が原因でむちうちの症状が発生したことが他覚的に証明できれば、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、12級13号が認定される可能性があります。
外傷性のヘルニアを発生する場合には非常に大きな外力が必要になりますが、ヘルニアなどの器質的異常により神経根の圧迫等が生じて、それにより対応する部位に痛みや痺れなどの症状が発生していれば、むちうちで12級が認定される可能性はあります。
後遺障害等級12級の後遺障害慰謝料は裁判基準で290万円になります。