遺言についてお悩みの方へ
1 遺産をめぐるトラブルを防止するために
遺言を残すのは財産が多くある家庭だけだとお思いの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際は金額の大小を問わず、遺産をめぐってトラブルが起こるケースが少なくありません。
「将来、自分の遺産をめぐって親族に揉めてほしくない」「財産は自分の希望する通りに分けてほしい」などの思いがおありの方は、遺産をめぐるトラブルを防止するため、遺言の作成をご検討ください。
とはいえ、どのような遺言を作成すればよいのかわからないという方がほとんどかと思われます。
そのような場合は当法人までご相談ください。
弁護士がより良い遺言の作成を目指し、サポートさせていただきます。
2 遺言について弁護士に依頼するメリット
⑴ 正しい形式の遺言を作成できる
遺言書の書き方には明確なルールが定められています。
このルールを守られていない遺言は原則無効となってしまいますので、作成の際は十分な注意が必要です。
弁護士にご依頼いただければ、このような法律上のルールを見落とさないようにするためのチェックを受けることができます。
⑵ 遺言の中身についてアドバイスを受けられる
相続を得意としている弁護士であれば、揉めやすい遺言の内容についても知識があるかと思います。
そのような弁護士にご依頼いただければ、知識を活かして、相続時の揉めごとを事前に防ぐための遺言の書き方についてアドバイスを受けられるはずです。
せっかく残した遺言がかえって揉めごとの原因とならないようにするためにも、一度弁護士にご相談いただき、内容面についてのアドバイスを受けられることをおすすめいたします。
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遺言の上手な活用方法
1 遺言が役に立つ場面とは
相続で争いが起きるケースの多くは、遺言がない場合です。
遺言がない場合、相続人同士で話し合いをして、遺産の分け方などを決めなければなりません。
その際、それぞれの相続人の立場から「私は介護を頑張ったから多めに遺産が欲しい」「私は大学に行けなかったのにお兄さんは大学の学費を出してもらってずるい」といった意見が出て、そのことが原因で家族の仲が険悪になってしまうこともあります。
遺言があれば、あらかじめ遺産の分け方を指定できるため、少しでも争いが起きる可能性がある場合に、遺言は非常に役に立つものといえます。
ここでは、特に遺言の必要性が高い場合をご紹介するので、上手に遺言を活用しましょう。
2 子や孫がいない場合
子や孫がいないご夫婦ですと、「自分が亡くなったら、配偶者が遺産を全部相続する」と考えている方は少なくありません。
しかし、必ずしも配偶者が全遺産を相続するとは限りません。
例えば、夫が亡くなった場合、相続人は妻と、夫の両親ということになります。
仮に、夫の両親がすでに亡くなっている場合、相続人は妻と、夫の兄弟姉妹です。
つまり、妻は、夫の両親や兄弟姉妹と遺産の分け方の話し合いをしなければなりません。
配偶者にそのような負担を負わせたくない場合には、遺言を活用しましょう。
3 遺産の大部分が不動産という場合
例えば、預貯金があまりなく、2000万円の価値がある不動産だけが遺産となるケースを考えます。
不動産は、非常に分けにくい財産であるため、その分け方をめぐって争いが起きやすくなります。
仮に、相続人が長女と二女の2人だけのケースで、長女が不動産を相続する場合には、長女は次女に1000万円の現金を自分の資産から支払うといった調整をしなければなりません。
しかし、長女に代替金を支払う資産がない場合や、二女が「この不動産は3000万円の価値があるから1500万円もらえるはずだ」等と主張したりすれば、大きな争いに発展する可能性があります。
4 老後のお世話をしてくれた方に多めに財産を渡したい場合
例えば、長男夫婦が同居して、生活のお世話をしてくれていたという場合、長男夫婦に多めに財産を渡したいと思う方は多いでしょう。
しかし、遺言がなければ、他の相続人の同意を得られない限り、法律どおりの割合で遺産を分けることになる可能性が高くなります。
そこで、遺言を活用して、長男に多めに遺産を渡したり、長男の妻にも遺産を渡したりすることを検討すべきでしょう。
遺言書を作成する際の注意点
1 誰かに遺言書を託さないといけない
遺言書は、作成しただけでは何の意味もありません。
法律上、遺言は亡くなった時に効力が生じます。
つまり、極端な言い方をすれば、遺言者が生前の間は、遺言書は何の効力も持たない書面であるため「亡くなった後」の事の方が重要だということです。
そのため、遺言書は、亡くなった後に必ず着目されるよう誰かに託しておかなければなりません。
例えば、遺言書を家のどこかで保管して、遺言書の存在を誰にも伝えなかった場合、どうなるでしょうか。
相続発生後、誰も遺言書の存在に気付くことなく、相続の手続きを進めてしまうかもしれません。
そのため、遺言書の存在を誰かに伝えておく必要があります。
自宅などに保管しておくのが不安だという場合には、法務局で作成した自筆証書遺言を保管・管理してくれる制度もあります。
参考リンク:京都地方法務局・自筆証書遺言書保管
2 遺言の内容によって相続税額が変わることに注意
不動産を誰かに相続させる場合、その不動産を誰が取得するのかによって、相続税額が大きく変わることがあります。
例えば、父親が亡くなり、相続人として長男と二男がいるケースであれば、父親と同居していた人はいるのかどうか、長男や次男が持ち家を持っているのかどうかによって、相続税額が変わる可能性があります。
遺言書を作成する際は、こういった税金面も考慮しなければなりません。
3 上の世代から順番に亡くなるとは限らない
「上の世代から順番に亡くなる」と、無意識のうちに考えてしまっている方がいます。
確かに、子や孫が自分より先に亡くなってしまうことは避けたいですが、必ずしも上の世代から順番に亡くなるとは限りません。
事故や病気などで、子や孫などの下の世代が先に亡くなる可能性もあります。
例えば、母親が、長男に不動産を相続させ、二男に預貯金を相続させるという内容の遺言書を作成したものの、相続させるはずの長男が先に亡くなってしまった場合、どうなるでしょうか。
このケースだと、長男に不動産を相続させるという部分が無効になり、不動産の分け方について、相続人全員で話し合いをしなければならなくなります。
このようなことを防止するため、子や孫が先に亡くなることもあるという前提を持ち、先に長男が亡くなった場合にどうするかという内容も考慮して遺言書を作成する必要があります。
遺言の種類
1 遺言の種類
遺言の作成方法は、民法で厳格に決まっており、この方式にしたがって作成されたものでなければ、法律上の効力がありません。
遺言の作成方法は複数あり、具体的には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、緊急時遺言(危急時遺言)、隔絶地遺言といったものがあります。
ほとんどの遺言書は、自筆証書遺言か公正証書遺言で作成されていますが、他の方式で作成された遺言書がないわけではありません。
以下では、それぞれの遺言がどのようなものであるのかを説明していきます。
2 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、自分で作成する遺言のことです。
自筆証書遺言で遺言を作成する際の要件は、全文を自書すること、作成日付を記載すること、署名と押印をすることです。
自筆証書遺言では、遺言書の全文を自分で書く必要があり、すべてを印字で作成されたものや、署名部分だけが自書であるものは無効になります。
そのため、自分で字を書くことが難しくなってしまった方は、この方式で作成することが難しいといえます。
例外として、財産の内容などは財産目録を添付するなどの方法で印字によることができますが、その部分には署名と押印が必要です。
また、財産目録が複数のページにまたがる場合には、すべてのページに署名と押印をしなければならないことにも注意が必要です。
作成日付は、特定の年月日が分かるように記載されている必要があるため、たとえば、「●年●月末日」という記載は認められる反面、「●年●月吉日」という記載は認められません。
このようなことが問題とならないように、シンプルに作成日を記載しましょう。
自筆証書遺言は、相続が発生した後、家庭裁判所での検認の手続きが必要です。
検認とは、遺言書が紛失したり、内容が改ざんされたりすることを防ぐため、相続開始後に、裁判所でその内容や状態を確認し、それらを証拠として保存しておくための手続きです。
検認をする期日では、遺言書を保管している者が裁判所に遺言書を持参し、相続人の立会いのもとで、裁判官と書記官によって、その内容などが確認されます。
相続人にはあらかじめ期日の案内が届きますが、相続人が立会うかどうかは任意ですし、相続人が立会うことが遺言書の効力に影響することもありません。
自筆証書遺言は、相続の開始まで紛失や改ざんがないように保管する必要がありますが、遺言書を法務局で保管してもらうことができる制度もできました。
この制度を利用すれば、安価な費用で保管を依頼することができ、遺言書を紛失してしまったり、改ざんされてしまったりするリスクを避けることができます。
このように、自筆証書遺言は、手軽で安価に作成することができるというメリットがあるという反面、弁護士などの専門家に相談せずに作成してしまうと、法律上の要件を欠いている遺言書を作成してしまったり、内容が妥当ではないものを作成してしまったりするリスクがあるといえますので、注意しましょう。
3 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人に作成してもらう遺言のことです。
公証人は、裁判官や検察官などとして法律実務に携わっていた法律の専門家で、実質的に公務員のような立場の者です。
公正証書遺言は、公証人が遺言書の口述を筆記することで作成することができますので、遺言者が字を記載することができない場合にも、作成することができます。
公証人は、法律の専門家ですので、そのような者に作成してもらうと、法律上の要件を欠く遺言書が作成されてしまうというリスクは非常に低くなるといえるでしょう。
法律の専門家が関与する手続きですので、相続開始後に、相続人から遺言書の効力が争われにくいという面もあるでしょう。
公正証書遺言は、自筆証書遺言と違って、相続開始後の検認の手続きが不要ですので、相続開始後ただちに遺言書を使った相続手続きを始められるというメリットがあります。
他方で、公証人に遺言の作成を依頼する場合でも、その遺言の内容をどのようなものにすればよいのかというアドバイスをしてくれるわけではありませんので、内容については、弁護士などの専門家に相談してから決めるのがよいでしょう。
公正証書遺言の作成では、利害関係がない等の資格のある証人2人を準備する必要もありますが、弁護士などの専門家に依頼する場合には、その弁護士などが証人になることが一般的です。
公正証書遺言では、公証人への作成費用がかかりますが、その額は財産額や遺言の内容によって異なります。
4 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま作成する遺言のことです。
封を施された封筒の中に遺言書が入っていることを公証して作成します。
遺言書の内容を秘密にしたまま作成することができますが、公正証書遺言でも、公証人や依頼した弁護士などが内容をみだりに公開することはありませんので、あまりメリットがありません。
そのため、この方法はほとんど利用されていません。
5 緊急時遺言(危急時遺言)
緊急時遺言(危急時遺言)とは、遺言者が余命いくばくもない状態で作成する遺言のことです。
遺言者が証人の一人に遺言の内容を口授し、その証人が遺言を筆記して作成します。
作成した遺言書は、作成の日から20日以内に、家庭裁判所での確認を得る必要があり、家庭裁判所は、その遺言が遺言者の真意に出たものとの心証を得なければ、確認することができません。
さらに、遺言者が通常の方式によって遺言ができるようになったときから6か月間生存したときは、その遺言は効力が生じなくなります。
このように、緊急状態での作成ですし、手続きが複雑ですので、万一、この遺言書を作成する必要があるときは、弁護士などの専門家に依頼して作成してもらう必要があるでしょう。
遺言の効力について裁判所の確認を得るためや、後日、相続人等に効力を争われないためには、医師からの診断書を得ておくなどして作成する必要もあるので注意が必要です。
6 隔絶地遺言
隔絶地遺言とは、遺言者が一般社会と隔絶した状態にある場合に認められる遺言のことです。
民法上は、伝染病によって隔離されていたり、船舶内や船舶での遭難によって危急状態にあるものであったりという状態が挙げられています。
緊急時遺言と同じく、遺言者が通常の方式によって遺言ができるようになったときから6か月間生存したときは、その遺言は効力が生じなくなります。
そのため、これらの遺言が作成される場面というのは非常に特殊なものといえます。